中小企業向けの令和4年度税制改正のポイント

会計・経理 税制
公開日:2022.1.28
更新日:2022.1.28
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令和3年12月10日に令和4年度税制改正大綱が公表されました。
令和3年12月24日には政府が同内容の「令和4年度税制改正の大綱」を閣議決定しました。
今回はこの税制改正大綱に基づき、多くの中小企業に影響がある箇所を絞って、ポイントをご説明致します。

①中小企業向け「賃上げ促進税制」(旧、中小企業向け「所得拡大促進税制」)

賃上げ促進税制は、前年度より給与等を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税から税額控除できる制度です。
今回、成長と分配の好循環の実現に向けて、積極的な賃上げを促す観点から賃上げに係る税制措置を抜本的に強化する事が、税制改正のテーマとして謳われています。
その一環として、「積極的な賃上げ等を促すための措置」が講じられました。

ポイントは以下になります。

  • 適用対象年度は令和4年4月1日~令和6年3月31日までの間に開始する事業年度
  • 適用要件に変更なし。税額控除率の上乗せ措置の見直し
  • 上乗せ措置の適用により、税額控除率が最大25%から最大40%に見直し
  • 上乗せ要件が緩和(かつ要件から個別要件に変更)
  • 雇用者給与等支給額の比較雇用者給与等支給額に対する増加割合が2.5%以上である場合には、税額控除率に15%を上乗せ
  • 教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が10%以上である場合には、税額控除率に10%を上乗せ
  • 税額控除上限は当期の法人税額の20%で従前から変更なし

<ご参考>
適用要件:雇用者給与等支給額が前年度と比較して1.5%以上増加
この場合、税額控除率は15%。
上乗せ要件を満たすことにより、15%+15%+10%、最大40%の税額控除率となる

②少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度(対象資産)の見直し

ここ数年、巷で話題になっていた、ドローンや建設用足場資材を利用した課税繰延スキームへの対応として、見直しが行われました。

以下の制度において、対象資産から「貸付けの用に供したもの」を除外する事になります。ただし、貸付けが主要な事業として行われているものは除かれます。

  • 少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度
  • 一括償却資産の損金算入制度
  • 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

ポイントは以下になります。

  • 従前は少額の減価償却資産を取得し、取得年度含む短期間で損金算入。また、将来にわたり一定期間貸付けの用に供する事で、各年度に分割して益金算入。つまり取得年度含む短期間において課税の繰延が可能。今後は貸付の用に供した少額の減価償却資産につき、取得年度含む短期間で損金算入ができない為、課税の繰延処理は行えない。
  • 対象資産の見直しであり、貸付けの用に供したもの以外は従前から変更なし
  • 令和4年4月1日以降に取得等をする減価償却資産に適用。

③電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置の整備

色々と話題性があった当改正ですが、急遽経過措置が講じられることになりました。
制度の認知が進んでいない事、及び対応が困難な事業者の実情に配慮し、その出力書面等の保存措置の廃止を事実上延長するための措置(宥恕処置)が講じられています。

ポイントは以下になります。

  • 宥恕措置を適用した場合、電子取引の取引情報に関して、従前と同様に書面保存可能
  • 宥恕措置の適用にあたっては、納税者から税務署長への手続きは要しない
  • 宥恕期間中を対象期間として税務調査があった場合には、やむを得ない事情(社内ワークフローの整備が間に合わなかった等)を口頭で説明する
  • 令和5年12月31日までが宥恕措置の対象期間であり、令和6年1月1日からは原則的な対応が必要
    宥恕措置を適用した場合、継続して社内ワークフローを構築する事が必要になる
  • 今後も国税庁から追加のQ&A等が公表される可能性があり、継続して動向を確認する必要がある

以下、税制改正大綱から抜粋
「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、納税地等の所轄税務署長が当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについてやむを得ない事情があると認め、かつ、当該保存義務者が質問検査権に基づく当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする経過措置を講ずる。」

注:今後の審議状況等によっては、記載内容に変更が生じる可能性がある事に御留意ください。

令和4年度の税制改正~中小企業向けのポイント重点解説~

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