貿易取引に欠かせないインコタームズとは|2010と2020の違いもご紹介!

商社
公開日:2022.10.14
更新日:2022.10.14
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目次

貿易には、通関費用や輸送費、などさまざまな費用が輸出者・輸入者双方にかかります。また、輸送距離が長距離になるケースが多く、輸送途中で天候不良や事故などのトラブルに巻き込まれ、貨物が損傷したり紛失・消失・水濡れしたりするリスクもあります。商習慣が全く異なる外国との取引では、そういったリスクや費用をどちらがどこまで負うのかを事前に細かく取り決めをしておくことが必要です。そのときに指針となるのが、国際取引のルールであるインコタームズです。

本記事では、インコタームズの基礎知識をお伝えするとともに、2020年に改訂された最新版のインコタームズ2020と旧版のインコタームズ2010との違いについても解説します。

インコタームズの基礎知識

インコタームズ(INCOTERMS)とは、International Commerce Termsの略称で、国際商業会議所(ICC)が定めた貿易取引条件のことです。インコタームズは1936年に初めて制定されて以来、1953年、1967年、1976年、1980年、1990年、2000年、2010年と改訂をくり返してきていますが、現在のところは2020年1月1日に改訂・発効された「インコタームズ2020」が最新版です。

インコタームズは危険負担と費用負担の範囲を定めている

インコタームズは「絶対に従わなければならない」という強制的なルールではないものの、輸出入の際に世界共通の貿易条件として使われています。インコタームズで定めているのは、売主・買主間に発生する費用負担の範囲危険負担の範囲の2つです。

①費用負担の範囲
貿易には輸送費用だけでなく、さまざまな費用がかかります。それを売主・買主でどこまで費用を負担するかを決めておきます。インコタームズで定められている費用負担の定義は、輸出入時の通関費用、船積み・荷下ろし費用、運送費、保険費用の4つです。

②危険負担の範囲
輸送途中には、盗難や火災、輸送中の荷崩れ、バンニング・デバンニング作業時の事故などさまざまなトラブルが起こる可能性があります。そのリスクをどちらがどこまで負担するかも決めておく必要があります。

インコタームズは貿易取引で強制的なルールではない

インコタームズを実際に採用するかどうかは売主・買主双方が合意するかどうかによりますが、注意しておきたいのは、インコタームズには強制力(法的拘束力)はないということです。インコタームズは世界共通で使われている貿易取引条件ではありますが、条約ではないので、取引相手を強制的に縛るものではありません。

また、現在は2020版が最新版ではありますが、売主・買主の合意があれば2010年版を採用してもよいとされています。2020年版を採用する場合も2010年版を採用する場合も、のちのちトラブルがないように、契約書の段階で価格の建値として「INCOTERMS 2010」などと記載しておきましょう。

インコタームズ2020年(INCOTERMS 2020)の規則

インコタームズ2020は大きく分けて、いかなる単一または複数の輸送手段にも適した規則(輸送手段を問わず使える規則)・海上および内陸水路運送のための規則(海上輸送と内陸水路輸送だけに使える規則)の2つのグループから構成されています。その中に11の条件が入っていますが、それぞれのグループにどの条件が属するのかは以下を参考にしてください。

いかなる単一または複数の輸送手段にも適した規則に入るグループ:
EXW・FCA・CPT・CIP・DAP・DPU・DDP

海上および内陸水路運送のための規則に入るグループ:
FAS・FOB・CFR(またはC&F)・CIF

また、この11の条件は、その特徴から先頭のアルファベットを取った4つの類型にも分けることができます。

E型:売主の指定施設で引き渡した時点で費用負担・危険負担が移転する。買主の負担が最も大きい。
F型:輸出地で船側、本船または買主の指定した運送人へ引き渡した時点で費用負担・危険負担が移転する。
C型:危険負担は輸出地で移転するが、費用負担は輸入地で移転する。
D型:輸入地で費用負担・危険負担が移転する。売主の負担が最も大きい。

EXW(Ex Works:工場渡し)

売主の施設や工場、倉庫などの指定場所で買主に貨物を引き渡す条件のことで、引き渡しと同時に危険負担と費用負担が売主から買主に移転します。そのため、物品の引き渡し以降に発生する積み込み費用や輸送費、通関費用、保険料などの費用も買主の負担になります。売主の負担が最も小さく、買主の負担が最も大きくなる契約条件です。

FCA(Free Carrier:運送人渡し)

売主が指定した引渡地で、買主が手配した運送人に引き渡したときに危険負担と費用負担が売主から買主へ移転します。具体的には、指定引渡地が売主の施設(工場や倉庫など)の場合は、貨物が買主の手配したトラック等に積み込まれたときに危険負担と費用負担が移転します。指定引渡地がその他の場所(CYやCFS、空港の貨物ターミナルなど)の場合は、トラック等の上で運送人に引き渡されたときに危険負担と費用負担が移転します。

CPT(Carriage Paid To:輸送費込み)

売主が指定引渡地で売主により指定された運送人に貨物を引き渡した時点で、危険負担が売主から買主へ移転します。ただし、費用については運送人への引き渡しの地点までの輸送費のみならず、指定仕向地(輸入地)までの輸送費を売主が負担します。輸出通関手続きも売主が行います。船舶や飛行機からの荷卸し費用をどちらが負担するかは運送契約にもよりますが、一般的にコンテナ船輸送や航空輸送の場合、荷卸し費用は輸送費に含みます。

CIP(Carriage and Insurance Paid To:輸送費保険料込み)

危険負担はFCAやCPTと同じで、売主の指定引渡地で運送人に貨物を引き渡した時点で売主から買主へ移転します。費用については、売主の指定引渡地までの輸送費や指定仕向地までの輸送費に加え、保険料も売主が負担します。

DAP(Delivered At Place:仕向地持込渡し)

輸入国の指定仕向地に到着した輸送手段の上で、荷卸しの準備ができている状態で、買主に貨物が引き渡されたときに危険負担と費用負担が売主から買主へ移転します。指定仕向地までの輸送費は売主の負担、輸入通関費用や輸入税の納付は買主の負担となります。

DPU(Delivered At Place Unloaded:荷卸込み持込み渡し)

輸入国の指定仕向地で輸送手段から荷卸しされて買主に貨物が引き渡された時点で危険負担と費用負担が売主から買主へ移転します。指定仕向地での指定場所までの輸送費や荷卸費用は売主負担、輸入通関や輸入税の納付は買主負担となります。

DDP(Delivered Duty Paid:関税込み持込み渡し)

売主が指定仕向地まで輸送し、輸入通関と輸入税の納付を行って買主の指定場所(CYやCFS、倉庫、工場など)まで貨物を持ち込み、その輸送手段の上で貨物を売主から買主に引き渡した時点で危険負担と費用負担が売主から買主へ移転します。荷卸しの作業は買主が行います。

FAS(Free Alongside Ship:船側渡し)

指定積出港で買い手が手配した本船の船側(埠頭上または船積みの際に本船に横付けする艀(はしけ)上など)に置かれたときに、危険負担と費用負担が売主から買主へ移転します。木材など特殊な貨物の場合に使用する条件です。

FOB(Free On Board:本船渡し)

指定積出港で買い手が手配した本船の船上に貨物が置かれたときに、危険負担と費用負担が売主から買主へ移転します。輸出通関費用は売主、輸入通関費用は買主の負担となります。

CFRまたはC&F(Cost and Freight:運賃込み)

危険負担の分岐点はFOBと同じですが、指定仕向地までの輸送費は売主が負担します。輸入通関費用や保険料は買主の負担となります。輸送費に荷卸し費用を含むかどうかは事前の売主・買主間の合意によります。

CIF(Cost, Insurance and Freight:運賃保険料込み)

危険負担の分岐点はFOBと同じですが、指定仕向地までの輸送費と保険料は売主が負担します。CFRと同様、輸送費に荷卸し費用を含むかどうかは事前の売主・買主間の合意によります。

インコタームズ2010から2020への変更点

2010年度版から2020年度版への変更点は7つあります。

①積込済みの付記のある船荷証券とFCA規則
②費用の一覧の明示
③CIF・CIPにおける保険の補填範囲の違い
④FCA、DAP、DPU、DDPの各規則における自己の運送手段を用いる運送の取り決め
⑤DATからDPUへの変更
⑥輸送の手配義務と費用の分担に安全に関する要件を要求
⑦利用者のための解説ノート

この中でも特筆すべきなのが、DATがなくなり、DPUが新設されたことです。

DATからDPUへの変更はどこが変わったのか

2010年版にはDPUではなくDAT(Delivered At Terminal)がありました。DATでは貨物の引き渡し場所は(指定仕向地の)ターミナル(Terminal)とされていましたが、DPUでは貨物の引き渡しが任意の場所(Place)とされています。到着した手段から荷卸しされた後に危険負担と費用負担が売主から買主に移転するのは、DATもDPUも同じです。

インコタームズに定められた危険負担と費用負担の範囲を把握しておこう

ひとつの会社で働いていてインコタームズの11条件をすべて使う、ということはあまりありません。そのため、ひとつひとつの条件をカンペキに覚える必要もありませんが、よく使うものについては、自社が費用負担や危険負担をどこまで負うのかをしっかり把握しておくことをおすすめします。今後も輸出取引の際に知っておくべき情報に関する記事を掲載していきますので。ぜひチェックしてみてください。

【参考文献】

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商社・卸売業様向けに「GRANDIT miraimil ご紹介資料」と「貿易実務ガイドブック」をお送りいたします。

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