輸出通関の流れや貿易に必要な書類の基礎知識|貿易業務担当者になったら何をする?

商社
公開日:2022.10.14
更新日:2023.6.30
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目次

国内から国内に商品を出荷するときとは異なり、ある商品を輸出するためにはさまざまな書類の作成や手続きが必要となります。ここでは、輸出にどのような手続きや書類が必要となるのか、7つのステップに分けてみていきましょう。また、外国との取引だからこそ気をつけたい注意ポイントについても合わせて解説します。

輸出の流れ①取引先の選定~契約

まずは市場調査を行い、売り込み先を絞り込みます。売り込み先をリストアップしたら、DMやカタログなどを送付して営業活動をはじめましょう。広く自社製品を知ってもらうために、国内外の展示会の展示会に出品するのもひとつの方法です。
買い手候補からオファーがあれば、取引に関する条件(数量、価格、品質、船積時期など)を相手方に提示し、交渉します。言った・言わないの争いを防ぐためにも、相手と合意した事項は必ず契約書に明記しましょう。その際、インコタームズについても契約書に記載しておきます。また、相手国の輸入に関する法規制の調査や信用調査も忘れずに行いましょう。

輸出の流れ②海貨業者に通関手続きを依頼する

輸出通関手続きやコンテナへの積み込みをはじめ、船積みに必要な一連の業務は海貨業者(海運貨物取扱業者)に依頼するのが一般的です。船積みの予定が決まった時点で海貨業者に連絡し、船積みや倉庫への貨物搬入の時期を伝えておきます。
海貨業者は倉庫の担当者に連絡し、その予定に合わせて倉庫のスペースを空けておいてもらい、通関手続きをしてもらうように依頼します。

※厳密には海貨業者や倉庫業者、通関業者は別ですが、海貨業者が各港で倉庫業も通関業も担うケースも多いため、本記事では海貨業者が倉庫業も通関業も行っているとします。

輸出の流れ③船を予約(Booking)する

海貨業者は、積地・仕向地・海上運賃・スケジュールに合った船会社を選定して、ブッキング(船腹予約)します。ブッキングに必要な情報は決まっているので、あらかじめ必要事項をメモしておくとスムーズです。

  • Shipper(荷主)名
  • スケジュール(ETD/ETA)
  • 積地・仕向地
  • 本船名およびVoyage No.(航海番号)
  • 貨物の名前または種類
  • (FCL:コンテナ輸送の場合)コンテナのタイプ(20FT・40FT・40FTリーファーなど)・本数
  • (LCL:1つのコンテナに複数の荷主の貨物を混載する場合)貨物の容積・重量・荷姿

輸出の流れ④通関書類を作成する

次に、輸出通関に必要な通関書類を作成します。必要な書類は以下の3つです。

  • Invoice(商業送り状)
  • Packing List(梱包明細書)
  • Shipping Instruction(船積指図書)

書類の作成は、商社・メーカーなどの荷主側が行うこともあれば、海貨業者のほうで作成することもあります。荷主側で作成する場合、スケジュールに余裕をもって早めに書類を作成し、海貨業者に送付しましょう。海貨業者側で作成するときには、都市圏にある本社で作成し、各港の現場に送付するというケースも多くみられます。

Invoice(商業送り状)

インボイスとは、どのような品物をいくらで販売するのかを記載する書類です。海貨業者は、このインボイスを基に輸出通関手続きを行い、輸出申告金額から算出された関税などを納付します。必要な情報は以下の通りです。

  • Consignee(荷受人)の名称・住所・連絡先
  • Shipper(荷送人)の名称・住所・連絡先
  • Invoice No.
  • Invoice Date(インボイス作成日)
  • 出港予定日
  • 積地
  • 仕向地
  • 本船名およびVoyage No.
  • 支払条件(T/T Remittance、L/C at sightなど)
  • 商品名
  • 数量
  • 価格(それぞれの商品単価・合計金額)
  • インコタームズ
  • 原産地
  • 荷印
  • (L/C決済の場合)L/C No.     など

なお、サンプル輸出など無償のときでも、輸出の申告に金額の明記が必要なため、申告価格をゼロにせず本来の商品価格を記載します。その上で、価格のそばに「NO COMMERCIAL VALUE/VALUE FOR CUSTOMS PURPOSEONLY」などと記載し、無償での出荷であることを明らかにします。

Packing List(梱包明細書)

パッキングリストとは、貨物をどのように梱包して輸送するのか、どれくらいの重さがあるのかを示す書類です。具体的に品物の個数や荷姿(CartonやPalletなど)、荷印、梱包後の重量や容積についても詳しく記載します。CartonやPalletが複数ある場合は、それぞれにナンバーが割り振られます。複数のCartonやPalletに複数種類の貨物を梱包する際は、どのCarton No./Pallet No.にどの貨物が入っているのかを明記します。

Shipping Instruction(船積指図書)

シッピングインストラクションとは、どんな貨物をいつどの本船に積むのかの情報を記載するものです。港のバンニング作業員に特に伝えたいことがあるときは、この書類に記載しておきます。この書類に書かれている情報をもとにB/L(船荷証券)が作成されるため、間違いのないように作成しましょう。

輸出の流れ⑤貨物を保税地域に搬入し、輸出申告する

ブッキングした船のスケジュールやバンニング予定にあわせて、貨物を保税地域(または保税倉庫)に搬入します。FCLの場合はバンニング作業(コンテナへの積み込み作業)が必要なので、余裕を持って搬入しましょう。
書類と貨物が揃ったら、海貨業者の港の現場で輸出申告を行います。輸出申告は現在NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)というシステムを使って行われています。海貨業者はNACCS端末で申告を行い、税関もNACCS端末で輸出許可を出します。

バンニングと通関手続きが終われば、海貨業者がコンテナまたは貨物をヤードに搬入します。FCLの場合はCY、LCLの場合はCFSに搬入します。CYもCFSも、締め切り日(CUT日)があります。原則としてCY CUTは1営業日前、CFS CUTは2営業日前となりますが、米国向けだけはCY CUTは3営業日前、CFS CUTは4営業日前と特別ルールになります。ゴールデンウイークや年末年始の連休をはさむと、CUT日がその分早まるので注意しましょう。

輸出の流れ⑥出港~B/L入手

輸出許可が下りると、海貨業者のほうでDock Receipt(ドックレシート)を作成します。Dock Receiptとは、船会社が作成するB/Lのもとのようなものです。書類作成を海貨業者に依頼している場合は特に何もすることはありませんが、荷主が通関書類を作成している場合はDock Receiptが送られてくるので内容をチェックします。ここで間違いがあると、B/Lも間違ったままできてしまうので、念入りに確認します。L/C決済の場合は、1文字のスペルミスでも決済に影響がある可能性があるので、特に気をつけるようにしましょう。

荷主が通関書類を作成している場合は、出港予定日の前営業日(当日の朝になる場合もある)になると船会社からB/Lのコピーが送られてくるので、内容をチェックします。B/Lは出港日以降に入手できますので、出港予定日には船会社に本船の動静確認をしてB/Lが入手可能かどうかを問い合わせましょう。出港予定がその日の午後の場合は、午後からしかB/Lが発行できないケースもあります。天候不順や寄港の順番の入れ替えなどさまざまな事情で、出港予定が遅れるのはよくあることではありますが、到着予定日も変わる場合はConsigneeに一報を入れておくと親切です。

輸出の流れ⑦船積書類を相手へ送付

出港日になったら、船積書類をそろえてConsigneeへ送付することが必要です。原産地証明書や各種証明書(非木材証明書など)、保険証券などが必要な場合は、出港予定日までに準備をしておきましょう。B/Lを入手したら、InvoiceとPacking Listの出港予定日・到着予定日を実際の日付に修正します(到着予定日は出港日の時点でわかる範囲で構いません)。

修正が終われば、以下の書類をすべてそろえてConsigneeに直接郵送しますが、L/C決済の場合は銀行に持ち込みます。

  • Invoice
  • Packing List
  • B/L(3部)
  • (必要な場合のみ)保険証券
  • (必要な場合のみ)原産地証明書
  • (必要な場合のみ)非木材証明書などの各種証明書

輸出手続き時の注意点

外国との取引では、注意しなければならないことがいくつかあります。ここでは、輸出の際に知っておくべきポイントを3つに絞って解説します。

B/Lを送るときは2部と1部に分ける

B/Lを入手した後は、先述のとおり船積書類をConsigneeに送付しますが、外国へ郵送している途中で、紛失や消失して相手に届かないリスクがあります。B/Lがなければ現地に貨物が届いても受け取ることができません。Consigneeが現地で確実に貨物を受け取れるようにするためにも、面倒でもB/Lは1部と2部に分けて送るほうが安全でしょう。

現地ではデマレージが発生する前に貨物を引き取ってもらう

貨物が現地に到着した後、しばらくはヤードに無料でコンテナを置いておくことができます。この期間のことを「フリータイム」といいます。フリータイムは船会社により異なりますが、ドライコンテナの場合で5~10日間程度です。それを過ぎると、「デマレージ」という超過保管料がかかってくるため、Consigneeにはフリータイムの間に早めに貨物を引き取ってもらうようにしましょう。

旧正月(春節)や国慶節に注意

中国には、旧正月(春節)や国慶節と呼ばれる長期休暇があります。旧正月(春節)は1月31日~2月6日、国慶節は10月1日~7日の間です。この間は現地のヤードが閉鎖されてしまうため、船積予定のあるときは、この時期を避けてスケジュールを組むようにしましょう。ただ、これらの時期の前には船会社や海貨業者でも船積が混み合うため、船積み予定が決まった時点で早めに船や海貨業者のスケジュールを抑えておくことをおすすめします。なお、旧正月でヤードが閉鎖されるのは中国だけでなく、台湾やマレーシア、シンガポール、ベトナムなど中国系の民族の住む国も同様なので注意しましょう。

輸出貿易では仕入れや在庫管理、書類作成、請求業務などさまざまな業務が発生します。GRANDIT miraimilでは、相手先との契約情報や在庫状況・仕入・請求状況の管理から通関書類の作成まで一つのシステムで行うことができますので、事務負担を大幅に削減することが可能です。貿易にかかる事務負担にお悩みの企業様は、お気軽にお問い合わせください。

【参考文献】

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